基礎栄養学研究室

(R6.5.24更新)

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基礎研究・実用技術領域

博士前期・後期課程

 

准教授

乗鞍 敏夫

ノリクラ トシオ(Toshio Norikura)

<連絡先>

t_norikura@(@以下にms.auhw.ac.jpを加えてください)

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当研究室を紹介します

基礎栄養学は、基礎分野(生化学や人体構造学)と栄養学の実践分野(臨床栄養学、公衆栄養学)の橋渡し的な役割を担っている学問領域です。当研究室では、【栄養素の化学的性質や機能の解明】について、生物学と化学の実験手法を用いて取り組んでいます。

主な研究テーマ

□ 慢性腎臓病とサルコペニアの合併症モデルにおけるアミノ酸代謝物の生理作用

加齢にともない腎臓の働きは徐々に落ちてくることが知られています。慢性腎臓病(CKD)の食事療法では、たんぱく質(アミノ酸)の摂取制限が行われています。一方、加齢にともなう筋肉量の減少(サルコペニア)には、たんぱく質の積極的な摂取が推奨されています。慢性腎臓とサルコペニアの合併症(CKD-SP)は、高齢者において高頻度でみられますが、それぞれの食事療法(CKDのたんぱく質の摂取制限 or SPの積極的な摂取)が適用できません(図1)。

図1 合併症の食事療法

 

通常、食事から摂取したたんぱく質(アミノ酸)に含まれる窒素は、尿素へと代謝された後に、すみやかに尿中へと排泄されます。しかし、腎機能障害によって老廃物の排泄機能が低下すると、体内に窒素を含む尿毒素(図2)が蓄積されてしまいます。近年、これらの尿毒素は、さらなる腎機能の低下を招くだけでなく、骨格筋や骨組織の機能低下を招くことも明らかとなってきました。

図2 慢性腎臓病患者における窒素代謝

 

ケト酸は、窒素を含まないアミノ酸代謝物であり、ヒトの体内でアミノ酸と相互変換(図3)されます。経口摂取したケト酸は、アミノ酸よりも小腸における吸収率が低く、エネルギー基質として利用されやすいため、これまでサプリメントとしての有用性はアミノ酸よりも低いとされてきました。しかし、ケト酸は、アミノ酸と容易に相互変換するので安全性が高く、窒素を含む老廃物(尿毒素)を生じさせないという特徴があります。

図3アミノ基転移反応(アミノ酸とケト酸の相互変換)

 

我々は、代表的な尿毒素であるインドキシル硫酸がマウス骨格筋細胞(C2C12細胞)の分化およびミトコンドリアの生合成を抑制することを明らかにしています(未発表 in vitro CKD-SPモデル)。

我々の研究室では、このモデルにおけるケト酸の生理作用およびその作用メカニズムの解明を目指して、研究活動を行っています(文部科研 基盤C 採択テーマ)。

 

□ ケトン体の骨格筋における生理作用に関する研究

ケトジェニックダイエット(KD)とは、糖質の摂取量を制限し、その代替エネルギー源として脂質を摂取する食事法であり、世間では体重減少を目的としたダイエット法として認知されてきています。近年、KDによる認知機能や競技能力の向上効果が報告されていますが、これらの効果とその作用メカニズムは、いまだ十分に明らかにされていません。

ケトジェニックダイエットでは、糖質の代替えエネルギー源であるケトン体の血中濃度の上昇がみられます。これは糖尿病とも共通する生理的な状態です。しかし、糖尿病の場合にはインスリンの作用不足による高血糖が見られますが、ケトジェニックダイエットの場合には低血糖状態が見られます(図4)。

 

図4 糖尿病とケトジェニックダイエット時のケトーシス

 

ケトン体の血中濃度の上昇は、KD、飢餓状態(体重減少を目的とした過度のダイエットも含む)、糖尿病に共通する状態であり、一般的にあまり望ましいものではないと認識されています。しかし、生理的なグルコース濃度状態におけるケトン体の血中濃度の上昇が、全身の機能や代謝にどのように影響(改善 or 悪化)しているのかは、いまだ十分に明らかにされていません。

培養細胞の実験に用いる培地には、グルコースとアミノ酸が豊富に(生理的な濃度を超えて)含まれていますが、ケトン体は含まれていません。つまり、培養細胞の実験は、ほとんどが高栄養状態で行われていることになるため、グルコースやアミノ酸などの栄養素およびその代謝物の濃度を変化させた時の機能や代謝の変化を評価しにくいという特徴がります。

そこで本研究は、より生理的な栄養状態(グルコース濃度、アミノ酸濃度)の培養条件を検討し、ケトン体の骨格筋細胞における生理作用を明らかにすることを目的とした研究を行っています。

研究キーワード

□ アミノ酸代謝

□ ケト酸

□ 慢性腎臓病(CKD)

□ サルコペニア

□ 食事療法

□ 筋細胞

□ 神経細胞

□ ケトジェニックダイエット

教員が担当している主な科目

□ 食品栄養学特論(博士前期1年次)

食事から摂取する栄養成分(おもにたんぱく質とアミノ酸)および非栄養成分(機能性成分)の生理的な機能について学びます。

 

□ 健康栄養学特論(博士前期1年次)

栄養素の必要量の設定根拠となる実験方法や遺伝子データーベースの活用方法について学びます。

 

□ 基礎健康科学研究特論(博士後期1年次)

生理活性物質の作用メカニズムと構造-活性相関の評価や遺伝子データベースを活用した栄養素の機能評価について学びます。

 

院生の研究テーマ・研究実績

□ 筋細胞の分化におけるケトン体とオキサロ酢酸の生理作用(2023年度~2024年度)

 

当研究室への進学を希望する方へ

当研究室の目標は、”栄養学の発展への貢献”です。

  • ガイドラインの学術的根拠は、「学会発表」ではなく「学術論文の発表」です。つまり、栄養学を発展に貢献するために、当研究室は「学術論文の発表」を目指した研究活動に取り組みます。
  • 当研究室では、おもに培養細胞を用いた生物学の実験、生体内の栄養素の代謝を調べる化学の実験を行っております(動物実験は行いません)。
  • 民間企業で研究者として勤務経験があります。大学院修了後に食品会社などの民間企業で商品開発や研究活動をしていきたいという方も大歓迎します。民間企業の進路希望の方には、おもに化学をベースとした実験がメインになるように指導をします。
  • 研究活動を通した探究活動から、科学的な視点での考察力、学術論文の読解力などを身に着けたい方も大歓迎します。

 

興味 がある方は、お気軽にメールにてご相談ください。数日以内に必ず返信させて頂きます(返信がない場合はお電話下さい)。

 

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